ねぇ、昔話を聞いてくれる?
遠い遠い、昔々の話よ。
私は恋をしたの。
誰もが羨むほど素敵な、とても残酷な恋よ。
ひと目見てわかったわ。
この人が私の運命だと。
きっと、同じことをあの人も思ったはず。
だって、瞳がそう告げていたもの。
運命という言葉は、私たちをとても傲慢にしたわ。
ふたりを邪魔するものはすべて悪だと決めつけて、
何があってもこの想いを貫くのが正義だと思い込んで。
運命の恋人は結ばれるのが当然なのだと、
私たちは自惚れていた。私たちは浮かれていた。
だから、気づかなかったの。
運命の裏側で傷ついている人がいたことを。
運命で結ばれた私たちは、
運命によって引き裂かれた。
なんて、それはあまりに身勝手な言い分ね。
きっと自業自得。
ふたり以外に何も見えなかった私たちは、
二度と交わらない道を別々に歩くことになったわ。
最後に踊ったワルツを、今も私は忘れられないの。
あれから何度か、恋をしたけれど、
他の誰も、あの人の代わりにはなりえなかった。
きっとこれから、何度恋をしても、
あの人の代わりは見つからないの。
だから、ごめんなさい。
もう誰とも、ワルツは踊らないわ。
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