いっそこの道が、
曲がりくねった峠道ならいいのに、と思う。
「迷ってしまった」と言い訳して、
立ち止まっていられるから。
けれどこの道は、
どこまでも真っ直ぐに伸びていて、
進むことも、戻ることもできずにいる私を
急き立てるように続いている。
歩き出さない私の背中を押すように風が吹く。
うつむいたままの私を励ますように光が踊る。
放っておいてほしいのに
見捨てずに寄り添うものたちは
私が踏み出す瞬間を信じて止まない。
それでも私は進めない。
だってそこは、
あなたのいない世界だから。
もう二度と戻れはしない。
あなたといたあの頃に。
ふたりで過ごしたあの日々に。
どこまでも真っ直ぐに伸びた道の先に、
私が望む未来はない、と私は知っている。
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