いつものように差し出された手を
少し強めにキュッと握る。
わずかにピクリと肩を揺らした後、
あなたは何事もなかった顔で
私に向かい、目元を少し緩めた。
「なあに?」と問えば、
「何でもないよ」と言う。
「そう?」と少し目を伏せれば、
「ただ、幸せだなって思ってさ」なんて
心にもないことを言う。
私を見るあなたの瞳から
熱が消えたのはいつのこと?
ふたりの関係が少し、緊張感を失くしたころ?
それとも、あの人があなたの前に現れてから?
すべてわかっている。
変わってしまったあなたの心も、
あなたが私に言いたいことばも。
だから、これは私のイジワル。
知らないふりで、気づかないふりで、
もう少しだけ、あなたの隣りにいさせてね。
いつかこの恋に、私が自分で幕を下ろすまで。
もう少しだけ、もう少しだけ。
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