そんな夕暮れ時の、ちょっとまったりした空気がとても好きだ。
ただぼんやりと眺める時間が、私はとても好きなのだ。
だから、今日もこうして夕暮れの公園にやってきたのだが、
のんびりとした空気に到底そぐわない、迷惑なカップル。
下世話な言葉が飛び合う様子は、目立たないほうがおかしい。
ところが、公園を行き交う人は誰も彼らに見向きもしない。
迷惑そうに眉をひそめる人、怪訝な視線を送る人がいるはず。
そこまで考えて、ようやくこの不可解の状況を理解した。
たとえば、渋谷のスクランブル交差点を渡っている時、
この世に存在しないはずのモノが混じっているのが常だ。
生身の人間よりよっぽどパワフルに罵り合うふたりは、
どうやらここに、うんざりしている輩がいることなど、
少なくとも、あのカップルが、あの場にとどまっている間は。
夕暮れの公園をゆらゆらと漂っていたいだけなのだから。