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恋とか愛とか友情とか

「男と女の間に、友情なんてあるわけないだろ?」
 
呆れたようにのたまう友人は、
「恋愛感情のない女と食事をするなんて時間の無駄だ」
と息巻いた。
なるほど。世間とはそういうものか、と心でつぶやきつつ、
オレは、わが女友だちのことを考えていた。
 
一緒にいると楽しい。
食事にもよく出かけるし、夜通し飲んだりもする。
だからといって、そこに愛はあるかと聞かれれば、
おそらく、ふたり揃って首をかしげるだろう。
「ない」と言い切るほど冷めてもいないし、
「ある」と胸を張れるほど熱くもない。
恋と呼べるほど浮ついてなくて、
愛と言うには何かが足りない。
 
やっぱり、オレたちの関係は、
友情という言葉がしっくりくる、はずだった。
変化の兆しは、2月14日にやってきた。
小さなチョコレートに乗って。
 
渡された甘やかなプレゼントに困惑するオレ。
その場面に遭遇して、大いなる誤解を抱いたアイツ。
そして、オレとアイツの間に生まれた混乱。
あの日から、何かがまき起こり、吹き荒れている。
冷めていたはずの心は、時々、熱を訴えてきて、
どこか浮ついた気分にさせる。
 
「男と女の間に、友情なんてあるわけないだろ?」
 
そう言いながら、目の前で友人はニヤニヤと笑う。
友情という言葉がしっくりこなくなった女友だちのことを
オレは考えていた。
 
新しい関係をどう呼べばいいのか。
答えはまだ、わからない。

朗読/山口龍海