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残念な男

なにごとも、タイミングって大事だと思う。
だから、ことごとくそれを外すボクを、
世間は「残念な人」と呼んだりする。
 
ホームへと駆け上がった瞬間、電車のドアが閉まったり。
思いきってちょっと高めのジャケットを買えば、
翌日にはセールで大幅プライスダウンしていたり。
人気スイーツに並んでみれば、ボクの前できっちり売り切れる。
タイミングの悪さは折り紙付きだ。
 
もちろん、恋も例外じゃない。
早すぎたり、遅すぎたり。
いつだって、別の誰かに特等席を譲ってきた。
 
早めにやってきた見頃を逃し、葉ばかりが目立つ桜を見上げる。
がっくりと肩を落とすボクに、彼女は
「来年、また一緒に見に来ようね」
と言って、満開の桜よりも美しく笑った。
 
もう、誰にも譲ったりしたい。
来年の春も、彼女の隣はボクのものだ。

朗読/蒔苗勇亮