「姫さま~、ま、待ってくださ~い」
「月魄。あなたはここに残りなさい」
「イヤです。月魄は姫さまについてまいります。月の果てでも、地の底でも」
「もう、こちらの世界には戻れなくなるのよ? お父様に逆らって出ていくのだから。それがわかって言っているの?」
「だからこそ、ですよ。姫さま一人で行かせるわけには…」
「月魄…」
「(小声で)それに、私がついていないと、姫さま、何しでかすかわからないし」
「何か言ったかしら?」
「い、いえ何も! とにかく、私は姫さまのおそばを離れませんからね!」
「そう…。月魄、あなたがいると心強いわ。でも、本当にいいの?」
「もぉっ! くどいですよ、姫さま。月魄は姫さまのために存在しているんです。だから、どこまでだって、いつまでだって、姫さまとご一緒です」
「ありがとう。ねぇ、月魄。あのお方は今ごろ、どうしているかしら?」
「きっと、姫さまを想って、月を見上げていますよ」
「そうかしら。そうだといいのだけれど」
「そうに決まってます。誰もが見惚れる美しき姫さまを想わない男など、いるはずございませんもの」
「今も、あの日と同じお気持ちでいてくださるかしら」
「もちろんですとも。あれから、まだ半年ですよ。心変わりなどしようものなら、この月魄が許しません。ぎったぎったにしてやりますよ」
「まぁ、頼もしいわね」
「姫さまのためなら、月魄はどんなことでもいたしますから。必ずや、かのお方を探し出してみせましょう!」
「ふふふ。では、月魄。まいりましょうか。ともに、地の国へ」
「はい、姫さま!」
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