「ねぇ、きょうちゃん。次はりんご飴、食べたくない?」
「賛成! どのあたりにあるかな、りんご飴、りんご飴…っと」
「おい、ちょっと待て、ふたりとも」
「なに、良夜くん?」
「ん? 良夜、りんご飴の屋台あった?」
「ないけどな。それより、まだ食べるのか?」
「そうだけど?」
「何か、問題でも?」
「だってお前ら、結局、たこ焼きも大阪焼きも両方食べたよな。その後にイカ焼き食べて、じゃがバタ食べて、さっきまでベビーカステラ頬張ってただろ?」
「うん、そうだね」
「順番的に、次はりんご飴で間違ってないでしょ?」
「そういうことじゃなくて…。っていうか、どうなってんだよ、お前らの胃袋は」
「デザートは別腹でしょ? ね、きょうちゃん!」
「当然!」
「しかも、全部オレのおごりって、どういうことだよっ!」
「え、良夜くん、ダメなの?」
「なわけないよね?」
「いや、ダメだろ」
「あのね、いい良夜? 乃々は可愛いの。可愛いは正義なの。だから、良夜がおごるのは必然なの。おわかり?」
「だから、で繋げる意味がまったくもって理解できねーな」
「良夜って、意外と物分り悪いタイプ?」
「いや、お前らのほうがおかしいからな、この場合」
いつだってそう。
アイツがいるだけで、きょうちゃんは乃々といても、乃々を一番にしてくれなくなる。
いつもは、どんなときも誰といても、きょうちゃんの一番は乃々なのに…。
別に、きょうちゃんが意識して乃々を無視しているわけじゃない。
なのに、3人で話をしていても、いつの間にか、乃々がはじき出されていて、アイツがきょうちゃんをひとりじめしてしまう。
ふたりが長い付き合いなのは知ってる。生まれたときからの幼馴染だって。
だから、気心が知れていて、話しやすいのもわかってる。でも、そんなのズルい。
私だって、できることならきょうちゃんの幼馴染になりたかった。
生まれたときからずっと一緒に過ごしたかった。
アイツは幼馴染って特別なポジションできょうちゃんを独占してきたくせに、ズルいよ。
今夜だって、本当はきょうちゃんとふたりで楽しむはずだったのに…。
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