私は早速、猫探しを開始した。
病院を出たところで、いきなり行き詰まる。
そもそも、猫ってどこにいるもんなの? どこを探せばいいの? ペットとか飼った経験のない私には皆目検討がつかない。
あてはないけど、とりあえず病院に隣接した公園へと行ってみる。
芝生のあたりとか、何か猫とかいそうじゃない? ごろーんとか寝転がってたりして。ほら、あんな感じで…。
って、えぇーっ、もしかして見つけちゃった? すごいぞ、私。というか、ドラマとか小説よりできすぎた展開でしょ、これって。
喜び勇んで近づいてみると、残念ながらそこに寝転がっていたのは猫ではなく子犬。いまどき流行の超小型犬ってヤツだった。
なんだっけ、ほら、マグカッププードルとかっていう…生命力弱そうな感じの…
「お前、失礼なヤツだな」
誰かが私の頭の中に話しかける。急いで周りを見回すけど、誰もいない。っていうか、ユーレイに話しかけてくる人なんているはずないし。え、じゃあ誰の声?
「生命力弱そうで悪かったな。お前ら人間の仕業だろ、勝手にこーんなミニマムサイズにしやがったのは」
その愛らしい姿からは想像できない乱暴な口調で語りかけてきたのは、まさに目の前にいたマグカッププードルだった。
「あ、えっ、私のこと、見えるの?」
思わず、声が大きくなる。
「そんなでけぇ声出さなくても聞こえてるよ。まったく元気なユーレイだな。死にたてか?」
相変わらず、見た目に似合わないべらんめえ調で話しかけてくるマグカッププードルにまだ少し戸惑いながら、思いきって話してみる。
「あのね、私さっき死んだばっかりなんだけど…えーと、身体を貸してくれる猫を探してて。あ、ユーレイって物を触ったりできないから。鞄の中にある手帳が見たくて、困ってて、その…」
要領を得ない私の話に業を煮やしたように、呆れた声が頭に響く。
「で、結局はどうしたいんだ? 猫を探すなら近くのねぐらを教えてやらないこともないけど…」
「お、教えてくれるの?」
彼が話し終わらないうちに、勢い込んで口を挟んだ私に、ため息混じりの声が降ってくる。
「人の話は最後まで聞け。って言うか、ちょっと落ち着け。多分な、猫の身体を借りても無駄だぞ」
「え、無駄…なの?」
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