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プレゼント

僕が伝えたい言葉はひとつだけ。
キミから聞きたい言葉もひとつだけ。
けれど、伝えられたことがない。
もちろん、聞いたことだってない。
 
いつも一緒にいたのに、
その先へ進むことをためらっていた臆病すぎる僕ら。
いつも隣りにいたのに、
後戻りできなくなるのを怖がっていた意気地なしの僕ら。
だから今まで、ずっと今日まで、
大切なひとことを宿題にしたままでいた。
 
でも、そんな言い訳は、もう終わりにしよう。
だって今日はクリスマス・イブだから。
奇跡が起こる夜だから。
 
キミに、伝えたい言葉ある。
キミから、聞きたい言葉がある。
それを伝えるために、そのひとことを聞くために、
僕はこれから、キミに逢いに行くから。
 
ジングル・ベルが高らかになる街を駆け、
僕はキミの元へと急ぐ。
軽やかな鈴の音に励まされ、
華やかなイルミネーションに煽られながら、
僕は、キミの元へと急ぐ。
 
たったひとことだけの
クリスマスプレゼントを持ったサンタクロースを
キミは、笑顔で迎えてくれるかな?

朗読/岩切裕晃