やっぱり、見えてるのかな、秋生。
「そそっかしいからねぇ。日にち間違えてたりして」
「あぁ、果南ならやりかねないわー」
「あるある。そういえば、サークルの最初の合宿の時もさぁ…」
「そう、待ち合わせ場所間違えて」
「結局、秀一が迎えに行ったんだっけ」
「いつもそうだったよな。果南がドジ踏むと秀一がフォローして」
「仲よかったもんね、あの二人」
「さすがに今日は、秀一も果南のフォローは無理でしょ。主役だし」
「でも、秀一以外に誰が面倒見れる? あの果南だぞ」
えーと、何か私の印象ってヒドくない? っていうか、何その信用のなさ。たしかにまぁ、いろいろやらかした記憶はあるけど。
仲間たちの「果南やらかしエピソード」が延々と続く中、ひっそり凹む私の気持ちを察したように、秋生がすっと輪から一歩離れた。
「ちょっと化粧室に寄って行くから、みんな先に行ってて」
秋生は、チラリと私に視線をよこしながらそう言ってさっさと歩き出す。何となく、誘われたような気がして、ふわりふわりと彼女の後を付いていく。
化粧室で個室に入ると、彼女は潜めた声で語りかけてきた。
「果南…よね?」
「やっぱり、見えてたのね!」
勢い込んで私がそう言うと、秋生は悲しそうに顔を歪めた。
「果南、あなた…まさか」
「うん、そう。死んじゃったみたい」
悲壮な感じにならないように、ちょっとおどけて言ってみる。秋生はますます泣きそうな顔になった。
そんな彼女を励ますように、私は言葉をつなぐ。
「そんな顔しないで、秋生。いきなりで私もびっくりしたけど、大丈夫だから。あの、別に誰かを恨んで化けて出たとかじゃないし」
そんな風に茶化して言うと、秋生は怒ったように言う。
「バカね、こんな時まで強がらなくていいわよ。まったくもぉ…。でも、どうして…」
最後は少し涙声になった秋生に、私はどう答えようかと考える。でも、私のことが見えている秋生になら、本当のことを話してもいいかもしれないと思った。
秀一を好きだということは言えないけれど、私が事故に遭った経緯や私がしたいことを秋生に話したうえで、あのことをお願いしてみようと思った。
「あのね、秋生…私ね、」
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