「あのね、秋生…私ね、」
すべてを話し終わると、秋生は大きくため息をついた。
「伝えたいことって…告白でもする気?」
「えっ?」
「好きなんでしょ? そのくらい、果南を見てればわかるわよ」
えーっ! 何それ、私の気持ちってバレバレだったの? 秋生に? それともサークルのメンバー全員に? まさか、秀一にも?
「何、赤くなったり、青くなったりしてるのよ。大丈夫よ、みんなが知ってるわけじゃないから。気づいてたのは私くらいなもんだし。それに、当の本人はさっぱり気づいてないみたいだったしね」
ま、まあ、秋生だけならいいか。うん、ぎりぎりセーフってことにしておこう。でも、まさか自分の気持ちがダダ漏れていたなんて、恥ずかしいにも程があるわ。
「で、告白するわけ?」
「ま、ま、まさかっ!」
「じゃあ、何を伝えるつもりなの?」
秋生の瞳が、ちょっと悲しげに私を見つめている。
「それが…自分でもよくわからないの」
「何それ?」
「伝えなきゃいけないって気持ちは強くあるんだけど、なにを伝えたらいいのかがわからなくて。でもね、きっと私には言わなきゃいけない言葉があるはずなの」
「伝えなきゃいけない言葉、か」
秋生が私と一緒に考えこむように眉を寄せる。そうして少しの間、私達は黙ったまま佇んでいた。
「果南」
名前を呼ばれて、顔を上げる。真剣な眼差しが私をまっすぐに見つめていた。
「私の身体、貸してあげる」
「え、いいの? そんな簡単に」
「まあ、果南にはいろいろ借りもあるしね」
「借り?」
「果南が初めてだったからさ。私に気負いなく話しかけてくれたの」
「そうだっけ?」
秋生はにっこりと笑って頷いた。
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